INTRODUCTION

出会ってしまった意味を知りたい

アメリカツアーで直面した圧倒的な現実。僕らは葛藤という名の部族。
アンダーグラウンドシーンを牽引する若手バンドの代表格“GEZAN”初のドキュメンタリー映画

2009年の結成以来、精力的な活動を続け、野外フェス<全感覚祭>やレーベル<十三月>を主催し、現在の日本のアンダーグラウンドシーンを牽引するロックバンド“GEZAN”。少し音楽に対して敏感な人であれば、彼らの楽曲が次第に幅広い層に受け入れられ始めていることはもちろん、特にボーカルのマヒトゥ・ザ・ピーポーの歌詞の世界観と発言が、ある種のカリスマ性を持ち始めている事は現在進行形の事実として受け止めているだろう。また、それだけでなく彼らの活動は、まだ表舞台に出て来ていない新しい才能や、埋もれている才能を出会わせるネットワークとして日本だけでなく、世界へと広がっており、その存在は様々なものを巻き込んで大きな渦を作り始めている。そんな、バンドとして最も勢いを持って推進している“今”をギリギリの距離まで近づき記録したバンドとして初のドキュメンタリー映画であり、感情の疾走を記録したロードムービーが完成した。

差別と葛藤。ツアー先で彼らが見たものは、マヒトゥ・ザ・ピーポーの感情を揺さぶり続け、
そうして生まれたメッセージは音と重なり、GEZANを突き動かしていった。

自分たちなりのクラウドファンディング<BODY VUILDING project>で資金を集め、アメリカツアーとスティーブ・アルビニによるアルバムのレコーディングを敢行したGEZAN。彼らの盟友である映像作家“でるお”こと神谷亮佑はそこに帯同する。アメリカの地ではどこへ行っても彼らは歓迎を受け、表向きにはパンク・アンダーグラウンドシーンの世界的な連帯を感じさせた。しかし、そこには先祖の時代から大きく横たわっている根深い人種差別、拭い去れない憎しみが存在する事を彼らは知ることになる。遠い彼の地で受けた感覚と感情の変化を背負い帰国した彼らだが、その情動は消えるはずも無く、彼らに覆い被さるのだった・・・。そんな中、アメリカでの映像の編集に向き会っていた“でるお”は極限の状態にまで追い詰められ失踪する。そして、彼らが主催するイベント<全感覚祭>の開催はもう目前に迫っていた・・・。

カンパニー松尾の助言で生まれた作品。

Webマガジン「幻冬舎plus」で連載中のマヒトゥ・ザ・ピーポーのエッセイに注目していたカンパニー松尾が彼らと邂逅。アメリカツアーの映像があることを知り、編集してみることを強く薦めたことが本作品の発端。完成した映像に感銘を受けた松尾は、「この作品はより多くの人に観られるべき!」との想いで、キャノンボールシリーズで共闘したスペースシャワーTV高根プロデューサーに話を持ちかける。奇しくもスペースシャワーTVにて同タイミングで全感覚祭の撮影準備を進めていた経緯もあり、SPACE SHOWER FILMS配給の元、劇場公開が決定した。バンドのドキュメンタリーでありながら、アメリカの現実を見せ付けられた若者が葛藤し、自分たちなりの答えを探すというストーリーは現在に生きる老若男女全てに訴えかけるテーマでもあり、「アーティストのファンだけに向けたドキュメンタリーは作らない。」と常日頃から公言しているカンパニー松尾が入れ込んだ理由でもある。

『Tribe Called Discord:Documentary of GEZAN』
製作:十三月
プロデューサー:カンパニー松尾
音楽:マヒトゥ・ザ・ピーポー
デザイン:マヒトゥ・ザ・ピーポー
cover photo:池野詩織
題字:STANG

2019年|日本|カラー|ビスタ|88分|DCP|映倫審査区分:G|配給・宣伝:SPACE SHOWER FILMS